ストマックバンド

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【コラム】LOVE 2000

 

 

 

愛はどこからやってくるのでしょう。自分の胸に問いかけた。

 

マタドガス

 

数年前。前の会社で働いていた時、出会い系サイトで毎週のように浮気してる上司がいた。

クズだなあとは思ったけど、話を聞くのもまあ楽しかったから、止めたほうがいいですよ!とは言わなかった。

 

いつも嬉しそうに出会った女性の写メを見せてくる上司。

あるとき、とびっきりの笑顔で見せてくれた浮気相手(セフレ?)の写メがそれはそれはひどくって、びっくりした。

まずめちゃくちゃデブ。肉だるま。んでムラだらけの金髪プリン頭。顔に至ってはもうどうしようもないくらいブス。痩せたら可愛くなりそうなデブじゃなくて、ただただブス。痩せてもブス確定のブス。

マタドガスの小さい方に似てた。

 

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うわぁ…これはやばいな…って思って、言葉を選んで感想を言おうとしたら、上司が

「めちゃくちゃブスやろ。けど体の相性めっちゃええねん」

って言うから、「相性以前にまず勃つのがすごいっすね」って言ってしまった。

上司は笑ってた。

 

そのマタドガスと愛人契約を結んだのか、それから上司は毎週のようにこの人と遊ぶようになり、しまいには会社の仲いいグループの飲み会にも電話で呼び出して、2次会のカラオケでキスしたりしていた。グロ映像。モザイクかけろ。

 

しかしながら実物もやっぱりブスでデブ。

すっぴんでしょうもないヤンキーみたいなジャージにキティサンダル。前髪にはデカイヘアピンがついてる。数え役満。何がいいんだろう。あっ、体か。

ウシガエルのような声でマタドガスが歌うhitomiのLOVE2000が、小さいカラオケボックスで鳴り響いていた。

 

 

 星のスタンプ

 

 あるとき、血相を変えて上司が写メを見せてきた。

なんだよ、また違うブスと出会ったのか、なんて心のなかで思いながら見たら、そこには頬にヒゲのようなキズをつけたマタドガスの自撮りが映っていて、☆のスタンプで加工してあった。

 

 「大変や!!昨日男に監禁されて、顔に傷つけられて、レイプされたって!これが今撮って送ってくれた証拠写真や!明日の夜犯人シバキに行くぞ!!」

 

 いや頭おかしいだろ、レイプされた証拠写真を☆で加工しねえし、まず警察行けよ。

そもそも勃つやつがいねえだろ。お前以外に。

 

なんて思いながらも、あまりに本気で言うし、そもそもこっちに拒否権なんかないから従うしかない。

 

上司が作戦を語る。一生懸命考えてきたんだろう。

「だいたいの見た目とアパートはわかってるねん。車は黒のワゴンR。俺が部屋から出てきたところを捕まえるから、お前は見張りながら、タイヤの空気抜いて逃げれんようにしてくれ。早速やけど今日偵察してきてくれるか??」

 

ぼく「はい(ヤバイことになった)」

 

 

偵察

 

 

仕事終わりにオートバックスでタイヤの虫回しを買った。

これでタイヤのバルブについている虫を回して外すとタイヤの空気が抜ける。

 

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その足で言われたアパートの前をウロウロして、黒いワゴンRを探す。

1台だけ、チョッパーのぬいぐるみにマリファナの形の芳香剤、リヤガラスにギャルソンのステッカーっていう、いかにもな車を見つけて写真を撮って送った。

上司から「たぶんこれや!助かったわ!ほな明日!!」ってメールが来た。

 ほな明日じゃねえよバカ。

 

 

決行日

 

次の日、仕事が終わったあと、上司と現地近くのコンビニで待ち合わせた。

上司の車にはロープとガムテープ、インシュロックが積んであって、

「全部縛る系のヤツ!!」って思ったけど黙ってた。捕まえてどうするつもりなのか。

 

マタドガスとはあれから会っていないらしい。

「会いたくないっていうし、なんて声をかければいいかわからんのや、けど仇を取るって約束した」

 仇て。今時ワンピースでも言わねえよ。

 

 歩いて現地のアパートへ向かう。ポケットには虫回し。テレビで見るような少年探偵団のようで、少しだけドキドキした。

最初は信じていなかったのに、ここまで行動するとホントにレイプされたんじゃないかって思うようになり、マタドガスに同情する気持ちすら生まれていた。

洗脳ってたぶんこうやってされるんだろうな。

 

 薄汚いアパートの駐輪場に隠れて監視する。

マタドガスの話によるとソイツは夜勤で、もうすぐ出かけるはずらしい。

 

が、一向に出てこない。寒いし、家に帰りたかったけれど、上司の顔がマジだから我慢するしかなかった。

 

 

違和感

 

2時間位は待っただろうか。あまりになにも起こらないので、マタドガスに連絡してもらうことにした。

上司がマタドガスと電話しているときに、僕はふと思う。

 

「あの写真、やっぱおかしいな」

 

そう、あの星のスタンプで彩った自撮り写真。

どう考えても、前日にレイプされた人間が撮る写真ではないし、それを恋人(不倫相手)に送るマタドガスの心境もわからない。

 

そう思った僕は、電話が終わった上司に聞いてみた。

 

「見せてくれはったあの写真、マタドガスが一昨日に撮ったんですよね?」

 

「そうやと思うけど、なんかあんのか?まあちょっと聞いてみるわ。」

 

上司がマタドガスにメールを送る。すぐ返事が来た。

 

「うん、そうみたいやな。一昨日、えーっとレイプされた次の日やな。3日前か。俺に送るために撮ったらしい」

 

 

 

 

Exif

 

 

「ちょっとあの写真もう一回見せてください」

 

相変わらずブスなマタドガスが液晶に映る。星のスタンプが眩しい。

上司のガラケーを操作して、”写真の詳細”を確認した。僕はコナンくんになっている。

 

デジタルで撮影された写真には、Exif情報というのがついている。

これは写真に保存されている情報のことで、撮った日、機種やサイズなどが自動で保存されているのだ。

 

「やっぱりそうか」

 

マタドガスの自撮り写真の撮影日は、5日前だった。

全ては自作自演。メンヘラの業。

マタドガスは自分で顔に傷をつけて、写真を撮って、スタンプで加工して、準備していたのだ。

会おうとしなかったのは、キズがかさぶたになって治りかけてるのを見られたくなかったんだろう。

 

だからレイプなんてされていないし、僕が写真を撮ったワゴンRはその辺に住んでるただのチャラ男の車。

張り込んでいたのはただ汚いだけのアパートだった。

 

一通り説明したあと、上司は安心したのか怒っているのか、よくわからない顔をしていた。

 

「解散や」

 

家に帰る道すがら、僕はやってやった感でいっぱいだった。ざまあみろマタドガス。

 

 

エピローグ

 

次の日、あのあとどんな修羅場があったんだろうと楽しみに会社に行った。

上司は思ったより元気そうだったので、僕は笑いそうになるのを堪えて、どうでしたか?と聞く。

 

 

「家に行って、突き止めたら自作自演やって認めた。けどあいつ、寂しかったんやろうな。3回もセックスしたわ。」

 

 

ぼく「そうですか(どくガスで頭やられてんのかコイツ)」

 

 

 

 

 

愛はどこからやってくるのでしょう。自分の胸に問いかけた。

ニセモノなんか興味はないの。ホントだけを見つめたい。

 

 

 

 

 

500円もした未使用の虫回しは、今も僕の車のグローブボックスで出番を待っている。 

 

おわり